樫原ドクターの教えて講座

vol.8 腰椎コルセットの功罪

腰痛の対策としてコルセットを着用している方は結構おいでると思います。腰痛と言えばコルセットと考える方々も多いことでしょう。今回は、コルセットはなぜ有効か、問題はないのかということを考えてみましょう。

まず初めに、コルセットには種類があるということをご説明します。手術や腰椎の骨折などの後で使用する硬性コルセット(場合によりギプス)は、腰椎の動きを厳しく制限する必要がある場合に入院中に用いられます。次に、硬い金属の支柱が数か所に入っている半硬性コルセット、腰をきっちりと締め付ける、昔西洋の貴族の女性が使ったようなダーメンコルセットなどは、退院後に生活をしながら腰椎の動きを制限しておく必要がある場合に用いられます。三つ目は、通常、腰痛などに際して使用され、スーパーマーケットなどでも売っているソフトコルセットや、幅の広いベルトのようなタイプのものです。

各タイプのコルセットは、それぞれの病気やケガの状態に適したものを用いる必要があるので、整形外科の先生と相談しながら使用する必要があり、このことは大変重要です。手術を要するような病態の患者さんがソフトコルセットを用いても全く効果が期待できないでしょう。詳しく神経症状を診察してもらいCTやMRIにて原因を検討すれば、手術をするかしないかに拘わらず、ただしいコルセット種類を選ぶことができるでしょう。

よく患者さん達が話しているのを聞くと、「このコルセットはきついので幅を短くしてもらいたいとか、軟らかいものに変えて欲しい」というのがあります。御高齢の方の場合には、手術後の骨が癒合して安定するのには何カ月もの時間が必要です。あせりは禁物です。次に「コルセットが胸に当たって痛い」というのがあります。これは、背筋が伸ばされずに、コルセットにもたれかかる姿勢になっていることが原因である場合が多いようです。正しい姿勢をとっていただくか、コルセットを腰骨(腸骨)にしっかりと押し下げて装着していただければ胸を押さえて痛むことはないでしょう。時折「病院に来るときだけコルセットを着けている」とか、「病院にくるのでコルセットを外してきた」という方がおいでます。コルセットは通常、継続して装着する必要があるので、可能な限り着用していただき、外す場合でも、装着しているのと同じような体位を保持しておく必要があります。くれぐれも、コルセットを外して腰を曲げたりして、折角の治癒過程を台無しにしないように御願いしたいと思います。また、骨は動かさなくても、背筋、腹筋、大腰筋などは衰えないようにトレーニングをすることが肝要ですので、重要なリハビリテーションとしてコルセットを着用している場合の運動の指導を受けていただきたいと思います。

軟性(ソフト)コルセットには、褌(ふんどし)を締めるような効果もあります。こころを落ち着かせ、下半身に力をいれるには腹直筋を緊張させる腹圧を上げる必要がありますが、褌や帯、幅のあるベルト、そして弾力性のあるソフトコルセットは腹直筋を補助して腹圧を上げやすくします。腰痛持ちの方が、コルセットは効果があると感じる原因はこの点にあることが多いのではないかと考えます。

結論ですが、コルセットの着用に当たっては、「コルセットを入れられた」と受身的に対応せず、着用の目的を理解していただき、正しく使用していただければ良い結果に結びつく可能性が高まります。