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院長 林 秀樹  2005年8月11日 第6回癒しの環境研究会全国大会 発表内容
夜間ヘリ搬送体制を整備して〜小規模ながら、地域で二次救急医療を担う立場から〜

「利用者が考える生活の質向上への取り組み」

医療法人 芳越会 ホウエツ病院 理事長 林 秀樹 と申します。
65床という小規模民間病院でありますが、地域で二次救急病院を担う立場からヘリポートを2年半前より装備し、この度 新たに救急室に隣接して夜間照明付の24時間使用出来るヘリポートを新設したので報告させて頂きます。


「利用者が考える生活の質向上への取り組み」

当医療法人芳越会は 主に3つの組織より成り、急性期医療を主に担当しているホウエツ病院、介護療養病棟を持ち在宅医療を主体としている林クリニック、それと訪問看護ステーション「みやの」です。
ホウエツ病院は総病床数65の非常に小さな病院で、現在全てが一般病床です。37床が急性期、その内の10床が亜急性期病床、残りの28床が回復期リハ病床です。


「利用者が考える生活の質向上への取り組み」

当病院は地図で赤い所の「脇町」にあり、今年は町村合併し美馬市となりました。
徳島県の少子高齢化は全国的に見ても著しく、特に県西部は65歳以上の人口数と15歳以下の人口数の比率は、全国的にも突出していると言われてます。統計の数値はこれを含む美馬市の人口動態です。
この為市町村の財政的問題は今後もますます深刻化致します。
また脇町を含み水色の範囲が県西部T医療圏で、圏内の救急医療機関は年を追うたびに少なくなり、現在はいち町立病院と当ホウエツ病院の2ヶ所です。この為、当院は小規模ながら二次救急医療を担う事となりました。
また、三次救急、救命センターは赤丸の3ヶ所で、何れも当院からは救急車で1時間ほどかかる、徳島市内近辺に集中し、重症患者さまの受け入れ、搬送などが課題です。


「利用者が考える生活の質向上への取り組み」

二次救急病院は救命センターのように各科専門の医師が常時対応出来たり、救急専属の医師が常時居る事の出来る施設はありません。まして当院の様な小規模病院では医師の数も限られています。当院では断らない体制を保つ為、当直をする医師に限らず全ての医師にACLSに従い行動出来る体制を築いています。
また、6年前より救急車との間でホットラインも活用しています。
さらに、普段から定期的に医師、看護師、検査技師、事務部門をはじめ全職員と地元の救急隊との間で症例検討会やBLS等の訓練を行っています。おかげで地元の救命士さんは、当院のどの職員とも顔を知り合い、また当院が対応出来る医療的内容に関しても情報を共有しています。
全国的に各県、救急救命士や、救急医療に携わる医師が中心となった救急の会も増え、意見交換や横の連携を取れる機会が増えつつあります。待つ医療ではなく、現場を知り地域を知る医療を行えるよう、我々医療従事者も心がけるべきだと思います。


「利用者が考える生活の質向上への取り組み」

「利用者が考える生活の質向上への取り組み」

救急医療の分野では特に、搬送体制が広域化する程、高速化が望まれ、現在の交通手段ではヘリコプターが最も早いとされています。充分な連携が取れれば救命センターは人口100万人に1箇所で充分とさえ言われています。
現在、ヘリ搬送基準も重症度に応じて想定され、救命士はこれを習得し、現場から所属の消防長を通してヘリ要請が出来る体制が日本全国にあります。ところがこれを充分活用出来て無く、その原因として、ヘリポートを装備した医療機関が少ない事が挙げられます。救命センターには以前よりヘリポートの必要性が唱えられてきました。
しかし、現場により近い、特に当院のように周囲を山に囲まれた環境には必須と思われ、これまでヘリポートの設置に取り組んで来ました。その経緯を報告させて頂きます。
当院では平成14年12月10日病院駐車場の一角にヘリ場外離着陸場が航空局に認可されました。
翌年にはアスファルト舗装し、水巻の不要なヘリポートとなりました。同年4月28日には徳島県消防防災ヘリコプター「うずしお」の離着陸訓練を行いました 。


「利用者が考える生活の質向上への取り組み」

15年7月21日には、剣山山頂にて滑落した方がヘリで搬送されて来ました。第1回目の症例です。スキー場より当院に収容するまでに要した時間は12分でした。もし救急車で来られたら、約2時間を要したと思われます。
例え単なる骨折等を生じ、移動は困難も致命的でない場合、生じた場所が山岳地帯や離島などであれば、ヘリ搬送の適応ではありますが、救命センターへ搬送するほどではありません。今後救急救命にヘリコプターが頻繁に使われだすと、3次救急の負担を軽くするためにも、二次救急病院もヘリポートを備えることが望ましいと思われます。


「利用者が考える生活の質向上への取り組み」

平成15年のヘリ搬送した症例です。
私としては、地域の方々の救命に利用していただきたいとヘリポートを計画したのですが、この年はすべて県外から剣山登頂目的で来られた方ばかりでした。
2例目の方は、山頂で急性心筋梗塞を発症し、血圧低下、尿便失禁状態でした。当院へ来院後、救急処置を行い胸痛は消失、血圧も安定しましたが心電図では更なるST変化を生じており、香川県出身の方であったため、地元の香川医科大学へ、ヘリによる二次搬送を致しました。
ヘリ搬送に関しては、現場から医療機関への一次搬送と、病院間で行われる二次搬送が有りますが、2次救急病院にとっては いずれも同じ位に重要と思われます。


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ヘリポートを装備するにあたり、ヘリコプターの特異性を院内の職員のみでなく、地域の方にも御理解し、協力していただくため、同年10月19日にはヘリ体験搭乗を行いました。ヘリ離着陸時の風や騒音はかなり激しいため、やはり地域の方の御理解は必要です。
また同時に、行政、消防、救急医療に携わる方々を招きヘリに関する救急医療の勉強会も行いました。


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同年12月18日には四国4県ヘリ合同訓練が四国三郎の郷で行われ、航空隊長のお計らいで当院のヘリポートも使用し、他県のヘリと合同の救助訓練が行われました。
私はヘリに装備したホイストと言う、吊り上げ下げ装置で、上空でヘリから地面へ降り、また上空へ上がり、ヘリに乗り込む救助訓練をさせて頂きました。四国内では医師のホイスト訓練を行ったのはこの時が始めてだそうです。


「利用者が考える生活の質向上への取り組み」

本年2月には新たに救急室の直前にヘリポートを新設致しました。
先ほど述べました通り、一次搬送からの受け入れ、二次搬送、更には大災害時にも活動し易くする為です。更に24時間対応出来るべく夜間照明を装備した状態で大阪航空局に2月12日認可を頂きました。


「利用者が考える生活の質向上への取り組み」

病院の南側から見た所です。
ヘリポートの大きさは、全国の殆どの消防防災ヘリが離着陸出来る様に、6tクラスで申請許可を得ています。


「利用者が考える生活の質向上への取り組み」

救急車の到着する場所、救急室の入り口、ヘリポートの間には段差が無く、ストレッチャーで自由に行き来が出来ます。
また周囲に十分なスペースを設けているため、大災害時のトリアージもこの場で可能です。
多数の重症患者さまが発生した場合、広域に分散して搬送出来る手段はヘリコプターしかありません。


「利用者が考える生活の質向上への取り組み」

4月24日には民間ヘリコプターを利用して行政関係、医療関係、さらには地域の方々にも大々的に御参加頂き、体験飛行を行いました。さらに大災害時を想定してのトリアージと実際に模擬患者さまをヘリに搬入し、飛行中 機内処置を含めた搬送訓練を行いました。その模様をNHKがテレビで放送して頂いたので御覧下さい。
尚、今回の発表に前もってNHK取材をして頂いた記者には用いる事の承諾を得ています。


「利用者が考える生活の質向上への取り組み」


「利用者が考える生活の質向上への取り組み」

今後救急病院に望みたいこととして、
二次救急病院同士の連携を充実させること。
出来る限り多くの救急病院がヘリポートを装備される様に。
全国の救命センターは全てにヘリポートが整備され、緊急災害対策本部が設置された際にも色んな組織のヘリと連携が充分取れる様に。
常に救急隊との密な連携を図り、地域での勉強会や防災訓練等に積極的に参加して大規模災害の発生時に備え、日常的にヘリの使用が可能な環境の整備が必要と感じております。


「利用者が考える生活の質向上への取り組み」

徳島県の西部でのどかな環境に恵まれ、今後も地域の医療に邁進して行きたいと考えています。
ご静聴ありがとうございました。